そこに何がある?

「事務所拡張&リノベ計画」は何も手をつけられぬまま新スタッフを迎えることになりそうである。

忙しかった。
4月1日入社と思ってたけど、その日は日曜なんで4月2日に入社することになった。
4月2日は俺の誕生日。
32歳になる。
同学年1番乗り。
新入社員のワークスペースは現スタッフと当面は向かい合わせとなる。すまぬ。

よく自分の5年後とか10年後とかを想像することがある。
5年前、俺含めて4人体制の事務所になるとは思ってもみなかった。
10年前は22歳。携帯も持ってなかった。残業用の寝袋は持っていた。
オフィスの床でひとりで寝る。景色が違う。事務イスのキャスターが目の前にある光景。
なくしたはずのボールペンがふと見つかる。天井が高い。物音がよく聞こえる。
そんなことを思いながら、5年後10年後を考えもした。
身長160センチほどの親父のおさがりの寝袋は、身長178センチの俺には小さく肩や胸元がちと寒かった。
親父は残業用で寝袋を買ったのではない。昔、登山部だったらしい。
そういえば山登りを最後にしたのはいつごろだろうか。記憶がない。

登山家は言う。
そこに山があるから。

はは。俺の場合はどうだろう。

そこに敷地があるから。
いや違う。

そこにクライアントがいるから。
大概の職業がそうだろうや。

そこに答えが眠ってるから。
遺跡とかもあるかもね。

そこに未来があるから。
未来は誰にでも平等にあるからね。

そこに・・・

あ、底に虫が・・・さっき注いだパイナッポージュースのグラスの底に虫がいる。

昆虫採集家の場合は
そこに虫がいるから。

医者の場合は
そこに患者がいるから。

弁護士の場合は
そこに困った人がいるから。

政治家の場合は
そこに金があるから。

酒豪の人は
底がないから。

タクシーの運転手の場合
そこを右。

体育館の裏。
倉庫。

さて仕事しよっ。