熊本市内ケンチク見学など


先日、熊本市内の設計事務所 遊空間デザイン研究所さんのギャラリーで、ヤマギワ共催のルイスポールセンセミナーに足を運ぶついでに、
熊本市内のいくつかの近現代ケンチクを見てきた。


建築やってる人ならきっと誰でも知ってる再春館製薬女子寮(設計:妹島和世 竣工:1991年)。
(今は別のどこかの寮になっていた)
建築のノーベル賞と言われるプリツカー賞を昨年受賞した建築家の設計した寮である。
これ、建築やってない人からすれば”ちょっと金属チックな倉庫”ぐらいにしか見えんのだろうし、
パッと見、僕らでもこれが寮だとはわからない。
女子寮だから塀をくるりと廻して中に大きく開いてるのだからしょうがない。
開放感たっぷりの女子寮なんてもんがあったら、それだけで艶な建築になるんじゃなかろうかなんて、アホなことを考えてみる。
築20年経ってアルミがやや、やれてる個所があったが、ドモホルンリンクルを使えば、、、なんてことは思わなかったけどね。
しかし、コンセプト明快でとがった建築でステキでした。
左から4番目の画像は、うちのスタッフが寮内を盗撮してる様子。


県営保田窪第一団地(設計:山本理顕 竣工:1991年)
「くまもとアートポリス」参加事業の代表的建築の1つである。
これ、初見だったのだけど、写真で見ていた認識よりも実物はすごく迫力があり、場にとけ込んでいた印象を受けた。
おそらく新築時よりも20年経った今の方がそれは増してる気がした。
同時期に建てられた再春館製薬女子寮とは同じ住居系でありながらとても対照的。
洗濯物が風にそよぐのがとても似合っていた。
ブッロク塀と雑草と子供たちの声とバラック的なボールト屋根が午後の空の色にとけ込んでいた。
むき出しの開放階段がコンクリートで大成功という印象。
RC版ポンピドーな感じ。
現代のデザイナーズマンションより100倍かっこいい。


熊本逓信病院(現NTT西日本九州病院)(設計:山田守 竣工:1958年)
これもパッと見、ぶっちゃけ普通にありそうなタテモンですよね。
しかーし、これ日本におけるdocomomo100選に選ばれている有名な近代建築なんですよね。
山田守とは、日本武道館や京都タワーなどの設計者でもありまする。
1枚目が表通りで5枚目は裏通り(業者搬入側)からの写真です。
これ見ると、当時は裏通りではなかったのかもしれませんね。
2,3枚目の不規則な曲線のガラスカーテンウォールとスロープで覆われた空間は、低層階は待合、上層階はリハビリ室となっています。
そのカーテンウォールの外観が5枚目の写真というわけです。
敷地には余裕がありそうだったのですが、正円ではなく不規則な曲率の円だった理由がわからず。。。
知ってる人がいたら教えて欲しいなぁ。
で、このスロープが結構急(笑)。
階高は随分低く、その分外観のプロポーションがステキ。
低い天井に露出のスプリンクラー配管という組合せがモダニズム感を助長させる。
一番上の展望室みたいなところにはアクセスできず。。。残念。
低いプロポーションと、あらゆる薄い縁と、ゆるやかなカーブの外観、この3つがこの建物の印象でした。


熊本駅東口広場(設計:西沢立衛 )
しゃもじです。
クールなしゃもじです。
ステキなしゃもじです。
絶対に広島ではやれない建築ですね。
我が故郷の西都市の交番には、はにわがのっかっておりますが。
このうっすいスラブとほっそい柱の構造体を見せられると、地方の弱小事務所は「なんでもできていいなぁ」とか思ったりします。
雨も屋根中央の1本の樋で受けてるんですね。
すばらしい技術を目の当たりにして、ぽかんと口が空きましたね。
これもまた、「なんもないそっけない構造物やなぁ」と思われるかもしれませんが、
ここまでそっけなくするには相当の労力がかかってるのですよ、市民の皆さん。
つつみこまれそうな優しいケンチクでした。


つづいて同駅西口。
熊本駅西口広場(設計:佐藤光彦)
東口の屋根スラブに今度は壁がついたバージョンですね。
殺風景な西口側には視線のコントロールが必要だったということなのかな?
壁を切り抜いた開口から、山だったり空だったりが、自分の移動に合わせて変化していく楽しさがありますね。
この壁は、山留めなどに使う矢板っぽかったですね。
とにかく薄い。
円弧を描く壁の内側が濃い茶色、外側が白になっています。
待ち合わせで、かくれんぼして楽しめそうだなって思いました。
「お待たせ♡」
って彼氏が開口からでてきたらひときわハッピーそうです。


熊本南警察署熊本駅交番 (設計:クライン ダイサム アーキテクツ)
さきほどのしゃもじから歩いて1分ほどの場所にあります。
コンセプトが一目瞭然。見る角度で穴から見える色が変わるってやつだと思います。
その色もグラデーションがかかってるので、徐々に変わっていきます。
この穴開きの鉄板で覆われたスペースには何があるのかなと、想像したけどきっと何もないはずですよね。
ってことは、3D的看板建築と言っても過言ではないのか。
まさか、BBQスペースではあるまい。

以上5つの建築を早足で見て回り、夜はルイスポールセンのセミナー。
前日1時間睡眠での熊本だったので、睡魔との勝負と思ってたのだけど、終止興味深い内容とスライド映像でおもしろかったです。
グレアが最大の敵と言ってましたね。
敵はグレアにあり。
あと、住宅におけるダウンライトも徹底して使わないことを言ってましたね。
分かる気はします。
うちは、裸電球をよく使うので、耳に痛い話でしたが、まぁそれはそれでよしとしましょう。
海外のルイスポールセン社員の自宅のインテリアをたくさん見せてもらいました。
さすがに他社ブランドの照明は設けておらず、ホントに心底愛してるんだなぁと思いましたね。
テーブル上にさげるペンダントランプは天板から器具下端が60cmが基本!と叩き込まれました。
みなさんのご自宅はどうですか??
器具の大きさによりますが、立ち上がる時に頭を打たなければ、ペンダントは低い位置の方が空間がシュッとしますよ。
事例がデンマークの住宅が多かったのですが、ほとんどがリノベーションなので、
天井にあらたにいじくるのが大変だという理由もあってダウンライトは皆無でしたね。
基本的にはスタンド照明を多数置く感じでした。
まぁ、実践となると予算との勝負ですね。
有意義なセミナーでした。